多くの犬は牛乳の味や香が大好きなので喜んで飲みます。愛犬に美味しいものを与えたいのは飼い主さん共通の思いです。
でも・・・人間の体にとって身体に良いものでも、犬には良くないんじゃないの?と心配になる食品の一つが牛乳です。
インターネットで検索しても
- 「牛乳を飲ませてはダメ」
- 「牛乳を飲ませても大丈夫」
と意見分かれるので、飼い主さんとしては判断に困る時があります。
インターネットで調べると二つに分かれる意見でも、私が獣医さんに直接お話を伺うと多くは「飲ませても問題ない」という回答でした。
当然のことですが「飲ませても問題ない」というのは適量を与えるのが前提であり、大丈夫だからといって毎日好き放題飲ませれば
- カロリーオーバーによる肥満
- 過剰摂取による胃腸障害
などの病気を誘発する原因になります。
牛乳はたんぱく質・脂質・炭水化物の三大栄養素のバランスが良く「準完全栄養食品」といわれているのに加えて、ドッグフードだけでは不足しがちな水分やミネラルが豊富に含まれています。
インターネットで調べれば「犬に牛乳はダメだ」という意見もありますが、犬の体質に合わせて正しく与えれば心配することはありません。
今回の記事は、以下の目次にもありますが牛乳を与えると良い理由や、体質的に牛乳を与えられない場合の工夫など詳しく書きました。
犬に牛乳を飲ませてはいけない3つの理由
乳糖不耐症による下痢
乳糖不耐症とは、牛乳に含まれている乳糖を消化吸収できずに下痢を起こしてしまう症状です。
乳糖はラクターゼと呼ばれる消化酵素によって
- グルコース
- ガラクトース
の二つに分解されます。
うまく分解されれば下痢にはなりません。
しかし、ラクターゼの活性が低下していると小腸で消化吸収がスムーズに行われず下痢をしてしまうことがあります。
犬や人間などの哺乳類は、乳幼児の時期がラクターゼの働きが最も活発です。
離乳後から徐々に低下するため、大人になると「牛乳を飲むとお腹を壊すようになった」という人もいます。
「犬に牛乳を与えてはいけない」最も大きな理由としてこの乳糖不耐性による下痢が挙げられます。
下痢をすると脱水症状や栄養失調を引き起こし、体力が消耗するのでお腹が弱い犬には日常的に牛乳を与えるのは控えたほうが安心です。
犬でも人間でも個体差があり、大人になってもラクターゼの働きが活発で「全然下痢にならないよ」ということもあります。
私が飼っているベリー(ジャーマンシェパード)は牛乳を飲んでも全然平気で、今でも時々与えています。
カゼインによる牛乳アレルギー
牛乳に含まれているタンパク質「カゼイン」によってアレルギー症状が起きることがあります。
カゼインは牛乳だけでなく犬用のワクチンの保存の際、有効性を保つ安定剤として含まれることがあります。
牛乳にアレルギーをもつ犬がワクチン接種によって、アナフィラキシー症状など副反応のリスクが高まるので注意が必要です。
逆を言えば、カゼインを含むワクチン接種をしても副反応がなければ、牛乳によるアレルギーが起きる心配は少なくなります。
- 嘔吐
- 下痢
- 湿疹
アレルギーに関しては全ての食品に対して言えることで、牛乳だけ過剰に心配する必要はありません。
与えすぎによる栄養過多
牛乳を水分摂取がわりに与えていると、糖質や脂質の過剰摂取、ひいては摂取カロリーオーバーにつながりかねません。
牛乳の与えすぎに注意
- 肥満
「牛乳が原因で太る」ことはありませんが、食事の量を調整しないとカロリーオーバーになります。 - 亜鉛欠乏症
牛乳にはカルシウムが豊富に含まれています。
過剰なカルシウム摂取は亜鉛の吸収を阻害するため、脱毛や皮膚異常、免疫不全といった亜鉛欠乏症のリスクが高くなります。
牛乳はエネルギーや脂質だけでなく、アミノ酸スコアの高いたんぱく質や、カルシウム、リン、ビタミンAやB2などの優れた供給源としてとしても知られています。
ダイエットをしなければいけない犬の場合、牛乳をうまく活用し食事量を減らせば栄養バランスを保ちながら体重を減らすことができます。
牛乳の摂りすぎは良くありませんが、うまく活用すればダイエットに欠かせない食品とも言えます。
犬に牛乳を飲ませた方がいい理由
牛乳を飲まない犬より長生きする
犬と猫における長寿に関わる要因の疫学的解析によると、犬の長寿に関わる飼育項目としていくつかの共通点がありました。
長生きする犬の共通点
- 毎年予防接種をした
- 毎日散歩をした
- 同居動物がいた
- 手作りご飯を与えていた
- 毎日〜週に数回牛乳を与えていた
上記の項目はいずれも飼い主さんが犬の飼育にどれだけ手間をかけているか、言いかえるならどれだけ愛情をかけているかを示しています。
愛犬に天寿を全うさせるためには、極めて常識的ですが
- 適度な運動をさせる
- 栄養価の優れた食事を与える
- 予防注射など健康管理に気をつける。
これらの3つの点に気をつけることが重要であるかがわかります。
水分を摂ってデトックス
体内に溜まった老廃物は、おしっこと共に体外に排出されます。
体の中に充分な水分量がないと老廃物を輩出する水分が足りなくなってしまいます。
その結果、老廃物が身体に留まってしまうと・・・
- 尿の色が濃く、強いアンモニア臭がする
- 口臭や体臭が強い
- 目やにがよく出て、涙やけする
- 皮膚や被毛がベタつく
水分をしっかり摂ればデトックスがうまく機能しますが、犬が日常的に水を飲みたがらないケースがあります。
そんな時はお水に牛乳を混ぜてあげると、牛乳の香に誘われて飲んでくれることがあります。
足りない栄養の補給
牛乳は良質なタンパク質や脂肪をはじめ、犬に必要なほとんどのビタミンやミネラル類を含んだ栄養的に優れた食品です。
ドッグフードだけでは補給できない成分のうち、特に豊富に含まれるカロチン、ラクトフェリンなどは抗腫瘍、老化防止、免疫力の向上に効果があります。
ドッグフードを与えている犬は亜鉛不足の心配はありませんが、手作りゴハンの犬は亜鉛不足になりがちです。
手作りゴハンに牛乳を少量トッピングすることで必要量を摂取することができます 。
体質的に牛乳を飲めない犬のためにできること
牛乳が長寿や健康に深く関わりがあるのは分かっても、小腸でで乳糖を分解できない犬に飲ませるのはお薦めできません。
でも、工夫次第で牛乳を与えることもできますし、牛乳に代わる乳製品もたくさんあります。
飲んでも大丈夫な適量を知る
たくさん牛乳を飲むと下痢をするけど少量なら大丈夫という犬もいます。
犬が牛乳を口にした場合、どのくらいの量で下痢をするのかは正確にわかっていませんが、小腸に入る牛乳の量で症状の程度が異なると考えられるので、犬の体の大きさが関係しています。
人の乳糖不耐症では、体重50kgの成人が牛乳250~300ml以上を飲んだ場合に下痢といった症状が出ると言われています。
人と犬を正確には比較できませんが、1kgあたり5~6ml飲めば症状が出るという計算になります。
体重3kgの小型犬であれば、大さじ1杯、15ml以下なら牛乳を飲んでも大きな問題はないと考えられます。
また、牛乳はもともと加熱殺菌されていますので、加熱すれば飲んでも大丈夫ということはありません。
加熱しても牛乳の中には乳糖が残っています。
牛乳を水で薄める
牛乳を水で薄めても乳糖が分解できなければ下痢になってしまいます。
個体差によっては乳糖が少なくなる分、分解が行われ下痢にならないケースがあります。
牛乳は犬に絶対与えなければいけないものではないので、体調が悪くなるようなら牛乳に代わるヤギミルク、犬用ミルクを与えた方が健全です。
牛乳にヨーグルトを加える
ヨーグルトの中にはにはさまざまな乳酸菌が存在し、とりわけガセリ菌は乳糖分解性の高い乳酸菌です。
犬に牛乳を与える場合、牛乳にスプーン1杯ほどのガセリ菌ヨーグルトを加え数時間ほど置きます。
時間を置くことで、ガセリ菌が乳糖を分解してしまうので下痢の心配がありません。ヨーグルトは牛乳の栄養に加え、乳酸菌の働きによる栄養・保健効果も期待できます。
ヤギミルクを与える
ヤギミルクは牛乳と異なり乳糖が少なく、犬の母乳に近い成分のため下痢になりにくいミルクです。
栄養価が高く嗜好性も高いため、水分補給が必要な犬や食欲がない犬に与えると積極的に飲んだり食べたりしてくれます。
犬用ミルクを与える
犬用ミルクはあらかじめ乳糖が分解されているので、お腹が弱い犬や子犬、シニア犬にも安心して飲ませることができます。
商品によっては乳酸菌やオリゴ糖が配合されていて腸の状態を整える成分が含まれています。
開封しなければ長期保存できるので、災害時の非常食として備蓄できるので便利です。
牛乳に足りない栄養を加えた簡単レシピ
きな粉+牛乳
大豆から作られているきな粉には犬の健康に嬉しい成分がたくさん含まれています。
- イソフラボン
丈夫な骨を作る - 大豆オリゴ糖
お腹の調子を整える - 大豆ペプチド
高血圧予防 - 食物繊維
便通をよくする
牛乳にきな粉を加える場合、普通に混ぜるときな粉がダマになります。
先に容器にきな粉を入れ、少量の牛乳を注いでペースト状になるまでしっかり混ぜます。
そこから少しずつ牛乳を加えるとキレイに混ざります。
卵黄+牛乳
- オレイン酸
肝臓を強くする - ビタミンD
骨を丈夫にする - 鉄分
貧血予防
卵黄には牛乳のカルシウムの吸収をサポートし、骨を強くする働きのあるビタミンDが多く含まれています。
お互いに足りない栄養素を補うことで、単品では得られない相乗効果を得られます。