犬の肉球についた凍結防止剤の害
- 肉球がひび割れる
- 肉球が赤くなる
- 肉球から血が出る
- なめると嘔吐や下痢が出ることがある
- たくさんなめるとふるえやけいれんが出る
- 塩化カルシウムをなめると口や胃に潰瘍ができる
肉球がひび割れる
雪の日の道にまかれた凍結防止剤の粒は、肉球のすき間に挟まりやすく肉球がひび割れる原因になります。道路の塩や凍結防止剤が肉球を刺激して、ひびや切り傷ができることもあります。
凍結防止剤の成分の中で、肉球や皮膚への刺激がいちばん強いのは塩化カルシウムです。塩化カルシウムの融雪剤は、道ばたに置かれて誰でも使えるようになっていることがあります。自分の家の前や近所の道に、住民がまいていることもあります。
冬は乾いた冷たい空気や雪だけでも肉球がかさつきます。
肉球が赤くなる
肉球のすき間に挟まった凍結防止剤の粒は、肉球の赤みも起こします。肉球だけでなく、指の間が赤くなることもあります。
凍結防止剤は人の皮膚にも刺激があります。自治体の凍結防止剤のまき方の案内には、ゴム手袋をつけることが書かれています。素手で触ると手荒れや皮膚炎を起こすことがあるからです。
塩化カルシウムでは、人の皮膚が乾燥して赤くなります。塩化カルシウムを袋に詰める仕事をしていた人たちの皮膚には、赤みとはがれが見られました。犬も融雪剤の上を歩くと皮膚炎を起こすことがあります。
肉球から血が出る
肌が敏感な犬では、凍結防止剤で刺激された肉球がひび割れて血が出ることがあります。寒さだけでも、冬の肉球にはひび割れや出血が起きます。
肉球に不快を感じると犬は足を引きずったりしきりに足をなめたりします。散歩中に急に足を引きずるときは、けがのほかに指の間に氷のかたまりがたまっていることもあります。
なめると嘔吐や下痢が出ることがある
犬が凍結防止剤を口にするのは、散歩のあとに足をなめたときと、凍結防止剤の混じった雪を食べたときです。凍結防止剤の塩味を好む犬もいます。
凍結防止剤を口にしたときにいちばん多いのは、胃の不調と嘔吐や下痢です。1998年に米国の動物の中毒相談窓口に寄せられた50件あまりの例では、嘔吐が3割の犬に見られていちばん多い症状でした。下痢やよだれのほか、元気がなくなる・食欲が落ちる・水をたくさん飲むといった様子も出ています。
凍結防止剤そのものだけでなく、凍結防止剤で溶けた水を飲んでも口が荒れることがあります。足や地面を2〜3回なめた程度なら重い問題にはなりません。
たくさんなめるとふるえやけいれんが出る
凍結防止剤をたくさん口にすると、血の中のナトリウムが増えてふるえやけいれんが起きることがあります。日本の道路にまかれる凍結防止剤は、7割以上が塩化ナトリウムです。
塩化ナトリウムは、犬の体重1kgあたり4gで命に関わることがあります。体重5kgの犬なら20gです。
ほかの成分でも、量が多いと体に影響が出ます。尿素をたくさん口にすると、体に力が入らなくなったりふるえが出たりします。塩化マグネシウムは、腎臓病の犬では血の中のマグネシウムが上がりやすくなります。
塩化カルシウムをなめると口や胃に潰瘍ができる
塩化カルシウムを含む凍結防止剤を口にすると、口に潰瘍ができることがあります。たくさん口にすると、口だけでなく胃にも潰瘍ができます。
塩化カルシウムは、塩化ナトリウムよりも胃腸への刺激が強い成分です。血の混じった嘔吐や下痢が出ることもあります。人でも、塩化カルシウムを飲み込むと焼けるような感じがして吐き気や嘔吐が起きます。
融雪剤に含まれる塩化カルシウムは、犬の中毒を起こすことがあります。凍結防止剤の袋から直接食べてしまう犬もいます。凍結防止剤の成分ごとの害は、次の表のとおりです。
| 成分 | 口にしたときの主な害 |
|---|---|
| 塩化ナトリウム | 嘔吐・下痢 多いとふるえ・けいれん |
| 塩化カルシウム | 口や胃の潰瘍 血の混じった嘔吐・下痢 |
| 塩化マグネシウム | 胃腸の不調 腎臓病の犬は注意 |
| 尿素 | よだれ・軽い胃腸の不調 多いとふるえ |
凍結防止剤がまかれやすい場所
- 凍りやすい道
- 人通りの多い歩道
- 幹線道路
- 住宅街の生活道路
- 融雪剤の袋が置かれた場所のまわり
凍りやすい道

道路を管理する県や国は、路面の凍結が心配される天気のときに凍結防止剤をまきます。特に重点的にまくのは、橋・カーブ・日陰・坂道・交差点です。国道でも交差点や橋や急な坂を凍結防止剤をまく区間に決めて、路面の様子を見ながらまいています。
風通しのよい橋の上やトンネルの出入り口のあたりは、ほかの場所より気温が低く路面が凍りやすい場所です。交差点は、車のタイヤに磨かれた路面が鏡のように凍ります。日陰の道は、氷が溶けずに残ります。昼間はぬれているだけの路面も、夜や朝晩には凍っていることがあります。
坂道では、上のほうに多めにまくと溶けた液が下へ流れます。凍結防止剤の粒がまかれた所だけでなく、坂の下のほうの路面にも溶けた液が広がります。
人通りの多い歩道

雪が積もって歩く人の通行に支障が出ると、歩道や歩道橋の除雪が始まります。除雪で特に力を入れるのが、登下校や通勤の時間の横断歩道橋と歩く人の多い駅のまわりの歩道です。除雪とあわせて、融雪剤もまかれます。
人通りの多い駅のまわりや公共施設のまわりの歩道には、凍結防止剤や滑り止め材がまかれます。歩道には主に人の手でまかれ、一部では歩道用の小さな散布車も使われます。
雪の少ない都市でも、雪が降ると歩道橋や駅のまわりの歩道に融雪剤がまかれます。犬との散歩で駅の近くや歩道橋を通る道は、凍結防止剤がまかれやすい道です。
幹線道路

幹線道路には、主に散布車で凍結防止剤がまかれます。平成15年度に日本で使われた凍結防止剤の量の内訳は、高速道路42%・国道25%・県が管理する道路30%・市が管理する道路3%ほどです。
国が管理する国道では、凍結防止剤は塩化ナトリウムが基本です。まく量は1平方メートルあたり20gほどが目安です。
凍結防止剤は、雪が降らなくても路面が凍るおそれがあればまかれます。国道の今冬初めての散布が12月の初めの未明に行われた例があります。幹線道路や急な坂の生活道路や橋に、12月の初めから融雪剤をまく市もあります。
住宅街の生活道路

住宅街の生活道路では、住民が自分で凍結防止剤をまくことがあります。凍結防止剤を町内会や自治会に無料で配る市があり、5kg入りの袋を区役所や消防署や市民センターで市民に配る市もあります。
雪の少ない地域の市でも、凍結防止剤を自治会に配っています。配る条件を、雪が降る前に公道へまくことにしている市もあります。雪が積もる前の生活道路にも、凍結防止剤がまかれていることがあります。
住民がまく量の目安は、1平方メートルあたり一握りほどです。雪の降り始めには1平方メートルあたり50gが目安という市もあります。配る凍結防止剤には、塩化ナトリウムを使う市も塩化カルシウムを使う市もあります。
融雪剤の袋が置かれた場所のまわり

冬になると、国や県や市町村は橋・急な坂道・横断歩道橋に融雪剤を置きます。置かれた融雪剤は、通る人が自分でまくためのものです。
道路のあちこちに凍結防止剤を置いて、気温が氷点下になったら住民にまいてもらう市もあります。まく量は、袋に書かれた目安に従います。融雪剤を市内の数百か所に置いて、誰でも使えるようにしている市もあります。
置かれた融雪剤は、袋のまわりの凍った路面にまかれます。まかれる場所ごとのまき方は、次の表のとおりです。
| 場所 | まき方 |
|---|---|
| 凍りやすい道 | 道路を管理する県や国が重点的にまく |
| 人通りの多い歩道 | 人の手でまく |
| 幹線道路 | 散布車でまく |
| 住宅街の生活道路 | 配られたものを住民がまく |
| 融雪剤の袋が置かれた場所のまわり | 通る人がまく |
散歩の前に肉球を守る方法
- 肉球にワセリンを塗る
- 犬用の靴をはかせる
- 指の間の毛を短くする
肉球にワセリンを塗る

散歩に出る前に、ワセリンや獣医師が認めた肉球の保護剤を肉球にすりこみます。何も塗っていない素足の肉球についた凍結防止剤をなめると、冬の散歩は犬にとって危険なものになります。
ワセリンや肉球用のクリームは、肉球のひび割れを防いだり和らげたりするのに役立つことがあります。肉球用のワックスも、敏感な肉球を凍結防止剤から守る壁になります。
塗るのは、散歩に出る直前です。
犬用の靴をはかせる

犬用の靴は、ワセリンや保護剤よりもしっかり肉球を覆います。靴をはくと、指の間に砂や塩が挟まるのも防げます。
靴は犬の足に合ったものを選びます。服や靴を嫌がらない犬なら、雪の日の散歩には靴をはかせるのがいちばんよい方法です。
犬が靴に慣れるまでには、少し時間がかかります。雪の日の前に、体に合う靴をはく練習をさせておく方法もあります。
指の間の毛を短くする

指の間の毛が長いと、氷の玉や塩の結晶や凍結防止剤が毛にからみつきます。指の間の毛も含めて足の毛を短く整えておくと、からみつく量を減らせます。
指の間に雪の玉ができると、犬は口で雪の玉を取ろうとします。雪の玉を口で取るときに、凍結防止剤や道路の塩を口にしてしまうことがあります。
毛の長い犬種は、指の間の毛をトリミングの店などで慎重に切ってもらう方法もあります。
散歩のあとに肉球の凍結防止剤を落とす方法
- 濡れた布で拭く
- 水で洗う
- タオルで乾かす
肉球を濡れた布で拭く

雪の日の散歩から帰ったら、家に入ってすぐに濡れた布かウェットシートで肉球を拭きます。肉球や毛についた凍結防止剤を、家に入ったらすぐに全部拭き取ります。
すぐに拭くのは、犬が足をなめて凍結防止剤を口にする前に落とすためです。凍結防止剤の塩味を好む犬もいます。肉球がすっかりきれいになるまでは、犬に足をなめさせないようにします。
散歩中に凍結防止剤がつくのは、肉球だけではありません。脚やお腹にもつきます。犬は足だけでなく毛もなめるので、足と脚とお腹を拭きます。長い散歩にはタオルを持っていくと、ひりひりして荒れた肉球を途中で拭けます。
拭いたあとに犬が足をなめても困らないように、ウェットシートはペット用を選びます。ユニ・チャーム デオクリーン 純水99%ウェットティッシュは、ペットがなめても安心とメーカーが書いているウェットシートです。アルコールと香料を使っていない純水99%のシートで、20cm×14cmの厚手です。
ライオンペット ペットキレイ 除菌できるウェットティッシュもアルコールを使っていないウェットシートで、ペットの手足の汚れ落としにも使えます。メーカーの商品ページには、なめても安心という書き方はありません。
| 商品 | 特徴 |
|---|---|
| ユニ・チャーム デオクリーン 純水99%ウェットティッシュ | なめても安心 アルコール・香料なし |
| ライオンペット ペットキレイ 除菌できるウェットティッシュ | アルコールなし 手足の汚れ落としに使える |
肉球を水で洗う

拭くだけでなく、散歩のたびに足とお腹をぬるま湯で洗う方法もあります。ぬるま湯で洗うと、足やお腹についた氷や塩や凍結防止剤を洗い流せます。
凍結防止剤の粒は肉球のすき間や指の間に挟まりやすく、挟まった粒が赤みやひび割れを起こします。洗うときは、肉球のすき間と指の間も洗います。
洗剤を使うなら、ペット用のシャンプーがいちばんよい選び方です。人用のシャンプーに毒はありませんが、香料などが犬の皮膚を刺激することがあります。人の肌は弱い酸性で、犬の肌は中性に近いという違いもあります。
ライオンペット ペットキレイ お散歩あとの手足用シャンプー 犬用は、散歩のあとの足を洗うための泡スプレーのシャンプーです。泡が肉球のすき間にも入ります。メーカーの使い方では、ぬるま湯で足をよくぬらしてからスプレーします。泡をなじませて洗ったら十分にすすいで乾かします。
生後3か月未満の子犬には使えません。香りは控えめなフローラルです。シャンプーを使ったら泡立てるよりずっと長い時間をかけてすすぎ、シャンプーを残さず落とします。
タオルで乾かす

拭いたり洗ったりしたあとは、すぐに足とお腹をタオルで乾かします。指の間に雪の玉ができていたら、乾かすときに取り除きます。雪の玉には、氷や塩の結晶や凍結防止剤がからみついています。乾かしながら、肉球のひび割れと指の間の赤みも確かめられます。
ペット用の吸水タオルを使うと、足とお腹の水を早く吸い取れます。プロスタッフ ズバッと ペットのバスフクタオルは、80cm×40cmの大きなマイクロファイバーのタオルです。メーカーの表示では約1Lの水を吸います。
タオルの4つの角に三角のポケットがあり、両手を入れて犬の体を包むように拭けます。お腹側や足も拭きやすく作られています。対象は小型犬から中型犬です。
アイリスオーヤマ 超吸水ペット用タオルは、マイクロファイバーではなくPVAという素材の吸水タオルです。Mサイズは40cm×60cmで、チワワやシーズーやミニチュアダックスなどの小型犬に合う大きさです。
| 商品 | 特徴 |
|---|---|
| プロスタッフ ズバッと ペットのバスフクタオル | マイクロファイバー 80cm×40cm・約1L吸水 |
| アイリスオーヤマ 超吸水ペット用タオル | PVA素材 Mサイズは40cm×60cm |
凍結防止剤をなめた時に動物病院へ連絡する目安
- なめた量が分からない
- お腹や口に症状が出た
- ふるえやけいれんが出た
なめた量が分からない
足や地面を2〜3回なめた程度なら、重い問題にはなりません。動物病院へすぐに連絡するのは、少しなめた以上の量を口にしたかもしれないときです。症状がまだ出ていなくても、すぐに診てもらいます。
凍結防止剤の袋から直接食べてしまう犬もいます。凍結防止剤の塩味を好む犬がいるからです。道ばたに置かれた融雪剤の袋や家にある凍結防止剤の袋に犬が口をつけていたら、食べた量は分かりません。
日本中毒情報センターの相談窓口は人の中毒のためのもので、犬の凍結防止剤の中毒の公式な相談窓口はありません。犬が凍結防止剤を口にしたときは、かかりつけの動物病院に連絡します。
お腹や口に症状が出た
凍結防止剤を口にしたあとによだれ・嘔吐・下痢が出たら、すぐに動物病院へ連絡します。凍結防止剤を口にした犬にいちばん多い症状は嘔吐です。
ほかにも、元気がなくなる・食欲が落ちる・水をたくさん飲むといった様子が出ます。凍結防止剤で溶けた水を飲んだだけでも、口が荒れることがあります。
塩化カルシウムや塩化マグネシウムは、塩化ナトリウムよりも胃腸への刺激が強い成分です。血の混じった嘔吐や下痢が出たり、口や胃に潰瘍ができたりします。尿素では、よだれが多くなったりお腹が痛くなったりします。
ふるえやけいれんが出た
凍結防止剤をたくさん口にすると、血の中のナトリウムが増えてふるえ・ふらつき・けいれんが出ます。神経の症状が出たときは、すぐに動物病院へ連絡します。
塩化ナトリウムは、犬の体重1kgあたり4gで命に関わることがあります。体重5kgの犬なら20gで、小さな犬ほど少ない量で危なくなります。
腎臓病の犬は、塩化マグネシウムを口にすると血の中のマグネシウムが上がりやすくなります。腎臓病の犬が凍結防止剤を口にしたときも、かかりつけの動物病院に連絡します。
| 様子 | 動物病院へ |
|---|---|
| 足を2〜3回なめた | 重い問題にはならない |
| なめた量が分からない | 症状がなくてもすぐ連絡 |
| よだれ・嘔吐・下痢 | すぐ連絡 |
| ふるえ・ふらつき・けいれん | すぐ連絡 |


