吠えやすい犬種とその特徴

犬が吠える理由縄張りを守るための警戒吠え、来客や他の犬に対する威嚇吠えなど、状況によって吠える意味合いは異なります。すべての犬が同じように吠えるわけではなく、犬種によって吠えやすさには違いが見られます。

これは、それぞれの犬種が歴史的に担ってきた役割や、性格、体の大きさなどが影響していると考えられます。以下は吠えやすい犬種とその特徴をまとめました。
警戒心が強く吠えやすい小型犬
小型犬は可愛らしい見た目から、飼い主さんが過保護に育ててしまう傾向があります。過保護な環境で育つと、社会性が十分に発達せず、散歩中に他の人や犬、物音などに過剰に反応して吠えてしまうことがあります
甘やかしすぎるとかえってかわいそう!犬を「過保護」にすることの代償とは…(いぬのきもち)
ただし同じ犬種でも、育った環境や性格によって吠えやすさは異なります。大切なのは、愛犬の吠える理由を理解し、適切な対応をすることです。
- チワワ
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チワワは非常に警戒心が強く、知らない人や動物に対して敏感に反応します。飼い主さんに忠実な反面、縄張り意識が強く、少しの刺激でも吠えることがあります。
- ミニチュア・ダックスフンド
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元々狩猟犬として活躍していたため、物音や動くものに敏感です。吠えることで周囲に注意を促す習性があり、特に外の音に反応して吠えることが多いです。
- ポメラニアン
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愛玩犬としてのイメージが強いですが、もともとはソリ犬の血を引いており、エネルギッシュで警戒心が強いです。飼い主さんはに忠実ですが、他の犬や見知らぬ人には吠えやすいです。
- トイ・プードル
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知能が高く、学習能力が高い反面、環境の変化や刺激に敏感に反応します。番犬気質はそれほど強くないものの、不安や興奮から吠えることがあります。
防衛本能が強い中型犬・大型犬
中型犬・大型犬は、小型犬よりも縄張り意識が強い傾向があります。これは、かつて狩猟犬や牧羊犬、番犬として活躍していた犬種が多く、広い 領域を守る役割を担っていたためと考えられます。
- 柴犬
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日本犬の代表的な犬種で、独立心が強く、警戒心が強いのが特徴です。見知らぬ人や犬に対して吠えやすく、特に縄張り意識が強いため、散歩中に他の犬に吠えることが多いです。
- シェットランド・シープドッグ(シェルティ)
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牧羊犬として活躍していた犬種で、賢く、警戒心が強いため、吠えることで周囲に注意を促す習性があります。特に、不審な動きや音に敏感です。
- ジャーマン・シェパード
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警察犬や警備犬として使われることが多く、警戒心が強いです。飼い主さんに対して忠実ですが、見知らぬ人や犬には警戒し、吠えることがあります。
- ボーダー・コリー
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非常に頭が良く、エネルギーが高い牧羊犬です。吠えることで羊を誘導する習性があるため、興奮しやすく、物音や動きに敏感に反応して吠えることが多いです。
- ビーグル
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もともと狩猟犬で、獲物を追いかけながら吠える習性があります。興奮すると吠え続けることが多く、独特の遠吠え(ハウリング)をすることでも知られています。
吠えることで警戒を示す番犬・警備犬
番犬や警備犬は、不審者や侵入者を警戒し、吠えることで警告を発する役割を担ってきました。吠えることで相手を威嚇し、侵入を阻止する、あるいは飼い主さんに危険を知らせるという本能的な行動です。
- ドーベルマン
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非常に警戒心が強く、番犬として優れた能力を持っています。散歩中でも知らない人や不審な動きに対してすぐに反応し、吠えることで警告を発します。
- ロットワイラー
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強い体格を持ち、警戒心が高い番犬です。吠えることで警告を発するだけでなく、危険を察知するとすぐに行動に移る性質があります。
- グレート・ピレニーズ
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家畜を守るための護衛犬として使われていたため、非常に警戒心が強いです。特に夜間に吠えることが多く、音や動きに敏感に反応します。
犬種ごとの吠えを解決する方法
人間社会で暮らす中で、過剰な吠えは近隣住民への迷惑になったり、飼い主さん自身も困ってしまう原因となります。犬種によって吠えやすい傾向があることは事実ですが、適切な方法でしつけを行うことで、吠える頻度を抑えることは可能です。
警戒心が強い犬種の対策
代表犬
- 柴犬
- チワワ
- シェルティ

警戒心が強い犬種の一覧
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- 柴犬
- 秋田犬
- 甲斐犬
- 紀州犬
- 四国犬
- 北海道犬
- チワワ
- シェットランド・シープドッグ(シェルティ)
- ジャック・ラッセル・テリア
- ミニチュア・ピンシャー
- ダックスフンド(特にミニチュア)
- ベルジアン・マリノア
- ベルジアン・タービュレン
- ボーダー・テリア
- シャーペイ
- バセンジー
- 強い縄張り意識
- 激しい自己主張
- 見知らぬ人や犬に対する警戒心
警戒心が過剰に強い状態は、常に周囲を警戒し、緊張しているため犬の心身の健康に悪影響を及ぼします。このような過剰な警戒心は無駄吠えや攻撃行動などの問題行動につながることもあります。
以下のような警戒心を和らげる方法が効果的です。
- 社会化トレーニング
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- 他の犬と遊ばせる
- 公園、お店、車の中などさまざまな場所に連れて行く
- 大人だけでなく、子供や高齢者などいろいろな人に会わせる
- 車の音、チャイムの音、工事の音など日常生活で耳にする音に慣れさせる
子犬期(生後4ヶ月頃まで)は社会化期と呼ばれ、さまざまな経験を通して社会性を身につけるのに最適な時期です。この時期に人、犬、場所、音、匂いなどに触れさせることで、警戒心を和らげることができます。
子犬ほど吸収が早くはありませんが、成犬になっても社会化トレーニングは効果的です。時間をかけて経験を積ませることで、警戒心を緩和することができます。
- ポジティブ・リンフォースメント(正の強化)
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怖いものや苦手なものに遭遇した際に、おやつを与えたり褒めてあげたりすることで、「怖いもの=良いこと」という関連付けを行い、警戒心を和らげることができます。
無理強いはせず、犬のペースに合わせてゆっくりと進めることが大切です。
- 安心できる環境づくり
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犬が安心して過ごせるためには、クレイトやケージが必要です。犬自身が守るべきスペースを家全体ではなく、ケージだけに変えることで精神的な安定を促し、警戒心を和らげることができます。
- 家を守るのは「人間」
- ケージを守るのは「犬」
犬の視点では「この家全部を守るのは大変だけど、ケージだけなら安心して過ごせる!」ということになり、ケージを「安心できる場所」にすることで、必要以上に警戒せずに済みます。
- 専門家へ相談する
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警戒心が非常に強く、家庭での対応が難しい場合は、ドッグトレーナーや訓練士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
興奮しやすい犬種の対策
代表犬
- ビーグル
- ボーダー・コリー
- ウェルシュ・コーギー

興奮しやすい犬種の一覧
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- ビーグル
- ハリア
- シベリアン・ハスキー
- バセット・ハウンド
- ワイマラナー
- ミニチュア・ダックスフンド
- ボーダー・コリー
- オーストラリアン・シェパード
- ケルピー
- コーイケルホンディエ
- ウェルシュ・コーギー
- ジャック・ラッセル・テリア
- パーソン・ラッセル・テリア
- ノーフォーク・テリア
- ノーリッチ・テリア
- イタリアン・グレーハウンド
- 走るものや音に反応しやすい
- 狩猟犬・牧羊犬の本能による興奮
- 遊びたい気持ちやストレスから吠える
犬は本来活発に動き回ることを好む動物です。中でも興奮しやすい犬は運動能力が高い、または運動欲求が強いという共通点を持っています。
興奮しやすい犬種や運動欲求の高い犬種は、運動不足が吠えの大きな原因となるため、運動を取り入れることで吠え防止に繋がります。
- 運動の種類
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- 散歩、ジョギング、泳ぎなど比較的軽い運動
- 短距離走引っ張りっこなど、短時間に強い力を発揮する運動
- 嗅覚を使った遊び(ノーズワーク)
- 知育玩具を使った遊び(コング)
- 運動が吠え防止に効果的な理由
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エネルギーが有り余っている犬は、ちょっとした刺激で興奮し吠えやすくなりますが、適度な運動によってこの興奮を抑えることができます。
ストレスが溜まると、吠える、噛む、物を破壊するなどの問題行動を起こしやすくなります。運動によってストレスを発散することで、これらの問題行動を予防することができます。
- 運動以外のケア
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運動だけでなく、以下の点にも注意することで、犬のストレスを軽減し吠えを抑えることができます。
- 十分な睡眠:質の高い睡眠は、心身の健康に不可欠です
- 飼い主とのコミュニケーション:一緒に遊んだり散歩に行ったりする
- ケージやクレイト:落ち着ける場所を用意し、不安を感じる原因を取り除く
運動は吠え防止の有効な手段の一つですが、それだけで全てを解決しようとせず、他のしつけや環境づくりと組み合わせて行うことが重要です。
警戒吠えや恐怖からくる吠えなど、原因によっては運動だけでは改善しない場合があります。その場合は、原因に合わせたトレーニングや環境づくりが必要となります。
無駄吠えが多い犬種の対策
代表犬
- ポメラニアン
- トイプードル
- ヨークシャー・テリア

無駄吠えが多い犬種の一覧
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- ポメラニアン
- トイ・プードル
- ミニチュア・シュナウザー
- マルチーズ
- シーズー
- ヨークシャー・テリア
- パピヨン
- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
- ビーグル
- シェルティ(シェットランド・シープドッグ)
- ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウェスティ)
- 退屈を吠えて発散
- かまってほしい、注目を引きたい
- 分離不安(飼い主がいないと不安で吠える)
無駄吠えが多い犬は賢いので、過去の経験から学習します。「吠えたら飼い主が構ってくれた」「吠えたら欲しいものがもらえた」という経験をすると、「吠える=良いこと」と学習し、要求吠えが習慣化してしまうことがあります。
犬が記憶を呼び起こすきっかけとなる感覚の検証(Interaction-IPSJ)
また、飼い主との分離不安を感じている場合、不安や寂しさを紛らわせるために吠えることがあります。
これらの犬種は、単に吠えることを止めさせるだけでなく、根本的な原因である精神的な要因に対処することが重要です。精神的に満たされた状態であれば、無駄に吠えることが少なくなり、落ち着いて過ごせるようになります。
- 適切なコミュニケーション
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日常生活の中で、愛犬とのコミュニケーションを十分に取ることで、愛情や安心感を与えることが大切です。
- 優しく撫でたり、抱っこしたりする
- 一緒に遊ぶことで、楽しい時間を共有する
- 脳を刺激して精神的な充足を与える
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退屈や刺激不足は、ストレスの原因となり、吠えにつながることがあります。知育玩具やノーズワークなどを活用し、脳を活性化させることで、精神的な満足感を与えることができます。
知育玩具
おやつを隠して探させるおもちゃや、パズル型のおもちゃなど、知的好奇心を刺激するおもちゃを与えましょう。
ノーズワーク
嗅覚を使った宝探しゲームなどは、犬の本能を刺激し、心身ともに満足させることができます。
新しい場所への散歩
いつもと違う場所に散歩に行くことで、新しい匂いや音を経験させ、良い刺激を与えることができます。
- 要求吠えへの対処
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要求吠えに対しては、無視をすることが基本です。吠えている間は絶対に構わず、吠え止んだら褒めてあげたり、ご褒美を与えたりすることで、「静かにしていると良いことがある」と学習させます。
- 分離不安への対処
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分離不安が原因で吠えている場合は、留守番の練習を段階的に行うことが効果的です。最初は短い時間から始め、徐々に時間を延ばしていくことで、留守番に慣れさせることができます。
留守番中は、おもちゃや音楽などを与え、退屈しないように工夫することも有効です。
番犬気質が強い犬種の対策
代表犬
- ドーベルマン
- ロットワイラー
- ジャーマン・シェパード

番犬気質が強い犬種の一覧
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- ジャーマン・シェパード
- ドーベルマン
- ロットワイラー
- マリノア
- ジャイアント・シュナウザー
- ボクサー
- グレート・ピレニーズ
- マスティフ系
- フィラ・ブラジレイロ
- カネ・コルソ
- プレサ・カナリオ
- 不審な音や動きに敏感
- 飼い主さんを守るために警戒
- 侵入者(郵便配達員など)に反応
番犬気質の犬は、「家族(群れ)」を守るという本能が強く、リーダー不在だと 「自分が守らなければならない!」 という意識を持ち、過剰に吠えて警戒することがあります。
しかし、飼い主がしっかりとリーダーシップを取ることで、犬は 「リーダー(飼い主)が状況を管理しているから、自分は警戒しなくてもいい」 と感じ、吠える必要がなくなります。

かつては、人間が犬に対して絶対的な支配力を持つことが「リーダーシップ」だと考えられていましたが、現在では信頼関係が重要視されています。
正しいリーダーシップ
- 犬の欲求を満たしている
- 明確なルールと境界線を示す
- 信頼と安心感を与える存在である
誤解されがちなリーダーシップ
- 力や威圧で支配する
- 問題行動を無理に抑え込む
- 飼い主さんが上位にいることを示す
犬の心を育む7~犬に必要とされるリーダー像とは?(犬のココカラ)
- 犬の欲求を満たしている
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犬は心身ともに健康に過ごすために、運動、食事、休息、遊び、社会との接触などの欲求を求めています。
これらのニーズが満たされていないと、ストレスを感じ、問題行動を起こしやすくなります。飼い主さんは、犬の欲求を理解し、満たしてあげることで良好な関係を築き、問題行動を予防することができます。
- 犬種や年齢、体力に合わせて散歩や運動をする
- 栄養バランスの取れた食事を与える
- 静かで落ち着ける場所で休息させる
- おもちゃなど使って一緒に遊んであげる
- さまざまな人や犬に会わせる
- 明確なルールと境界線を示す
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犬は何をして良いのか、何をしてはいけないのかが分からないと不安を感じ、問題行動を起こしやすくなります。飼い主さんが明確なルールと境界線を示すことで、犬は安心して生活することができ関係が良好に保たれます。
- 「おすわり」「待て」「伏せ」などの基本的なコマンドを教える
- 禁止する行動に対して一貫したルールで注意する
- 良い行動をした時は褒め、悪い行動をした時は叱る
- 体罰は避け、言葉や態度で伝える
- 信頼と安心感を与える存在である
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犬にとっての「リーダー」とは、力で支配する存在ではなく、信頼でき、安心できる存在です。犬は予測できない状況や不安な状況に置かれたとき、頼れる存在を必要とします。
飼い主さんが堂々としていて落ち着い気があり、一貫性のある態度でいると犬は安心感を覚えます。
- 常に落ち着いた態度で接する
- 飼い主さんが不安やイライラを感じさせない
- 指示やルールは家族全員で統一し、一貫性を持つ
吠えにくいが状況次第で吠える犬種の対策
代表犬
- チャウチャウ
- グレート・デーン
- ニューファンドランド

状況次第で吠える犬種の一覧
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- ゴールデン・レトリーバー
- ラブラドール・レトリーバー
- アラスカン・マラミュート
- ニューファンドランド
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- グレート・デーン
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- ボルゾイ
- サルーキ
- ホワイト・スイス・シェパード
- フレンチ・ブルドッグ
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- パグ
- イタリアン・グレーハウンド
- バセンジー
- チャウチャウ
一般的に穏やかで吠えにくいと言われる犬種でも、以下のような状況では吠えることがあります。
- 要求:食事や散歩を要求する際に吠える
- 興奮:遊びや嬉しい出来事などで興奮して吠える
- 退屈:長時間何もすることがなく、退屈している
- 分離不安:飼い主と離れることで不安を感じて吠える
- 警戒:見慣れない人や物音、他の動物に対して警戒している
- 危険の知らせ:火災や地震など、危険を感じた際に吠えて知らせる
特にゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーといった犬種は、もともと作業犬として人間と密接に関わってきた歴史があり、知的で活動的な性格をしています。

そのため十分な刺激がないと退屈を感じやすく、吠えることで気を紛らわせようとしたり、注意を引こうとしたりすることがあります。退屈させないためには、以下のような工夫が必要です。
- 十分な運動
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犬種や年齢、体力に合わせて適切な運動をさせることが大切です。これらの犬種は比較的体力があるため、散歩だけでなく、ドッグランで自由に走り回らせたり、水遊びをさせたりするのも良いでしょう。
- 知的な刺激
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知育玩具やノーズワークなどを活用し、脳を活性化させることで、退屈を解消することができます。
- 知育玩具
- おやつを隠して探させるおもちゃや、パズル型のおもちゃなど、知的好奇心を刺激するおもちゃを与えましょう。
- ノーズワーク
- 嗅覚を使った宝探しゲームなどは、犬の本能を刺激し、心身ともに満足させることができます。
- トリック(芸)の練習
- 新しいトリックを覚えることは良い刺激となり、飼い主とのコミュニケーションを深めることにも繋がります。
- 知育玩具
- 住環境に変化を与える
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生活環境に変化を加えることで犬の好奇心を刺激し、退屈しのぎができます。例えば、窓から外が見えるようにしたり、新しいおもちゃを与えたり、定期的に部屋の模様替えをしたりするなどが有効です。
誤解されがちなリーダーシップ

犬のしつけでリーダーシップという言葉は広く使われていますが、その意味はしばしば誤解されています。犬との関係においては、過去の「リーダーシップ論」が根強く残っており、現代の考え方と混同されていることがあります。
- 問題行動を力で抑え込むという誤解
- 力による支配=リーダーシップという誤解
- 人間が上位にいる必要があるという誤解
このような誤ったリーダーシップは、犬の問題行動を強化するだけでなく、飼い主と犬の関係を悪化させる原因となります。
力による支配=リーダーシップという誤解

犬は群れで生活する動物であり、人間もその群れの一員として、犬に対して絶対的な支配力を持つことが「リーダーシップ」だと考えられていました。この考え方に基づくと、体罰や威圧的な態度で犬をコントロールすることが「正しい」とされていました。
もうここまで分かっている! 研究者が教える『犬が考えていること』に目からウロコ(grape)
しかし、近年の研究により犬と人間の関係は、オオカミの群れのような厳格な上下関係ではなく、より複雑で柔軟な関係であることが分かってきました。犬は人間を「群れのリーダー」として見ているのではなく、家族や仲間として認識しているという考え方が主流になっています。
そのため、力で支配しようとすると、犬は恐怖や不安を感じ、飼い主との信頼関係を築くことが難しくなります。むしろ、犬が安心して過ごせる環境を提供し、信頼関係を築くことこそが、現代における「リーダーシップ」の重要な要素と言えるでしょう。
人間が上位にいる必要があるという誤解

かつての「リーダーシップ論」では、犬に対して常に自分が上位にいることを示し続けることが重要だとされていました。例えば、犬よりも先にドアを通る、食事を与える順番を厳守する、常に高い位置から犬を見下ろす、などが推奨されていました。
犬の主従関係や上下関係は間違い?変化している家族への考え方(わんちゃんホンポ)
これらの行為は必ずしも犬との良好な関係を築く上で必要ではありません。もちろん、基本的なルール(例えば、人の食べ物をねだらない、勝手に部屋に入らないなど)を教えることは重要ですが、日常生活の中で常に上下関係を意識させる必要はありません。

犬の行動をよく観察し、犬の気持ちを理解しようと努めること、そして、犬の欲求に適切に応えることの方が、より重要です。犬が安心して過ごせる環境を提供し、適切なコミュニケーションを取ることで、自然と良好な関係が築かれ、犬は飼い主を信頼するようになります。
犬との接し方~愛犬の気持ちに寄り添ってうまく付き合おう~(セゾンのくらし大研究)
問題行動を力で抑え込むという誤解

犬が吠えたり噛みついたりするなどの問題行動を起こした場合、力で抑え込もうとするのは、逆効果になることが多いです。力で抑え込もうとすると恐怖や不安を感じ、問題行動をさらに強化させることがあります。
犬の人に対する攻撃行動をいかにマネージメントしていくか(英国リンカーン大学 生物学研究室 菊地 三恵)

犬の問題行動の根本原因を理解し、適切な方法で対処することが重要です。例えば、吠えの原因が警戒心からくるものであれば、社会化トレーニングを行い、様々な人や環境に慣れさせることで、警戒心を和らげることができます。
分離不安が原因であれば、留守番の練習や環境の見直しを行うことで、不安を軽減することができます。
犬の問題行動と叱らないしつけ方法(sCH Dog Center)
このような問題行動に対しては、専門家(ドッグトレーナーや訓練士)に相談することも有効な手段です。専門家のアドバイスを受けながらトレーニングを行うことで、問題行動を改善することができます。
ダメ犬脱出、藤井聡の犬のしつけ方法【日本トップクラスのカリスマ訓練士 藤井聡 指導】オンライン版
この記事の重要なポイント
犬が散歩中に吠える理由
犬が散歩中に吠えるのは、縄張り意識、警戒心、興奮のコントロール不足が主な理由です。
縄張り意識の強い犬は、自分のテリトリーを守るために他の犬や人に吠えます。特に柴犬やジャーマン・シェパードなどの番犬気質の犬種はこの傾向があります。
警戒心が強い犬は、不安や恐怖を感じると吠えて威嚇します。チワワやポメラニアンなどの小型犬は社会化不足が原因で過剰に警戒することが多いです。
興奮しやすい犬は、動くものや音に過敏に反応し、吠えてしまいます。ビーグルやボーダー・コリーなどの狩猟犬・牧羊犬は、この興奮が抑えられず吠えやすくなります。
犬種に合わせた吠えの解決策
犬の吠えを解決するためには、犬種ごとの特性に合わせた対策が必要です。警戒心が強い犬種には、子犬期からの社会化トレーニングが非常に有効です。さまざまな人や犬、環境、音、匂いに慣れさせることで、警戒心を和らげることができます。
成犬になってからでも、時間をかけて社会化を進めることで効果が期待できます。また、怖いものや苦手なものに対して、おやつを与えたり褒めたりするポジティブ・リンフォースメントも有効です。
誤解されやすいリーダーシップの考え方
過去には力による支配がリーダーシップだと考えられていましたが、近年の研究では、信頼関係と適切なコミュニケーションが重要視されています。
力や威圧で支配したり、常に自分が上位にいることを示し続けたり、問題行動を力で抑え込もうとしたりするのは、誤ったリーダーシップの典型例です。これらの方法は、犬に恐怖や不安を与え、問題行動を悪化させる可能性があります。